IT戦略の全体像 2026.05.01

「IT戦略の全体像」第2回 ITアーキテクチャを考えよう

皆さん、こんにちは。
桜が概ね終了(北海道はこれからでしょうか?)し、天気予報から花粉予報コーナーがフェードアウトして初夏を感じる日が増えてきました。私自身はようやくマスク無しで外出してもくしゃみ・鼻水に苦しまない季節の到来を歓迎する今日この頃です。

さて、前回は「IT戦略の全体像」というお題で書き始めた記事の第1回としてIT戦略を分解すると「攻め」と「守り」に分けて考えるというお話をしました。今回はその中の「攻め」を実現するアーキテクチャについて書きたいと思います。

アーキテクチャとは

アーキテクチャとは、自社のIT資産として何をどう使うかを規定した基本設計図であり、大まかに言うとアプリケーションとインフラから構成されます。

アプリケーションを用途で分類すると業務に特化した業務アプリケーションと、従業員の多くが主として情報流通のために共通で利用するワークプレイスアプリケーションに分かれます。

またインフラの定義はかなりばらつきますが、ネットワークやPC/サーバ/スマートデバイス、セキュリティ対策あたりは一般的にカバーされると考えていいでしょう。文脈によっては規定基準類やデータ定義・マスタ、IT管理業務などが含まれることもあります。

アウトカムから考える

ITは経営の重要ツールであると考えたとき、アーキテクチャの設計図にどんなアプリケーション、どんなインフラを採用するのかは、ツールから得たい便益、すなわちアウトカムをベースにして考えるのが一番わかりやすいでしょう。もう一段上の立場で考えるならば、アウトカムとは自社の戦略実行や経営課題への対応といった動きに対するITによる貢献ということになります。

世間の動きやマスコミの報道などにアンテナを高く掲げてトレンドを見ておくのは重要ですが、流されるように何でもやってみる前に、まずはそれによって得たいアウトカムを明確にすることが重要です。

アウトカムとしてよく耳にするものを挙げてみるとこんな感じでしょうか。

  • 新規事業の立ち上げ
  • 売上の増加
  • 調達コストの削減
  • 新製品の開発期間短縮
  • 製造工程の歩留まり向上
  • オフィスワークの生産性向上
  • 従業員のエンゲージメント向上
  • 顧客のエンゲージメント向上
    ・・・などなど

ITはあくまでも手段(How)ですが、例示したアウトカム(What)を実現するポテンシャルを秘めているのは何となく感じますよね。

アウトカム・ドリブンの考察例

例えば「顧客のエンゲージメント向上」が狙いだとした時、よくある成り行きですが自社製品と顧客をつなげるスマホアプリ+Webを整備し、顧客がある程度の頻度で自社のデジタル基盤を訪れる状態を作る、というような手段があります。そのデジタル基盤で顧客が喜ぶようなサービスを有償で提供できれば「新規事業の立ち上げ」や「売り上げの増加」まで実現できちゃうかもしれません。“言うは易し”で実際にはそんなに簡単にいかないかもしれませんが、この筋書きに沿って掘り下げてみる価値を感じる企業は少なからずあるでしょう。

別の例も考えてみましょう。「調達コストの削減」を狙うとした時、例えば同一の物品(材料、部品、消耗品、、、)を各部署でバラバラに発注している状況ならば、全社でまとめて注文する業務の流れを作ることで調達交渉力を高めるという手があります。この場合、各部署からの調達依頼を一元管理し、円滑な調達業務を司る調達管理システムが役に立つでしょう。

成果指標が必要

このようにITを活用したアウトカムのシナリオは枚挙に暇がないわけですが、システム構築に入る前にもう一仕事しておきましょう。それは成果指標、つまりこの施策の成否を図るKPIを決めておくことです。これが曖昧だとプロジェクト進行中に方向がぶれて、気づいたら当初目論見と大きく違った姿になっていた、なんてことが起きるからです。お恥ずかしながら私自身もこの手の失敗を何度も経験しているので、「経験者は語る」的なアドバイスと思ってお聞きください。

プロジェクト推進の方法論はPMBOK(※)を基本にテーラリングするのが王道だと思うので、ここでは詳細について触れません。
※:Project Management Body of Knowledge

アーキテクチャの標準化

ここまでアウトカムの獲得を中心に置いたITの在り方を書いてきましたが、最後にもう一つ重要なルールをお伝えします。それは自社の標準アーキテクチャという概念です。

ITは自社の資産であり、それを会社が従業員に貸与して使わせるというのが本筋なので、従業員が勝手に自分の好きなものを使えるわけじゃないというのは自明ですよね。じゃあ何を使えばいいの? それが標準アーキテクチャです。

例えば「わが社の会計ツールはxxx」というような自社で使うべきアプリケーションやインフラの標準が記述されたもののことです。標準アーキテクチャの肝は、全社最適を具現化するというところです。すなわち個別の従業員の視点や個別の部署の視点ではなく全社の視点で最も適切な選択をするということです。

前述の例のように調達ツールの導入を考える際に、部署ごとに使いたいツールが異なるケースは多々ありますが、それぞれに好きなツールを使わせるのではなく全社で可能な限り一本化することを基本とすべきです。業務プロセス全体(EndToEndのプロセス)が無駄なく流れることは「攻め」のメリットとして重要ですが、「守り」の側面でも調達交渉力の向上やアーキテクチャがシンプルになることで運用工数の軽減やセキュリティ対策の負荷軽減なども期待されます。

ちなみにインフラも前述の最適なプロセスを支えることを前提に、安定性や安全性、コストなどを検討して標準を選定します。

次回はIT戦略の「守り」について書きます。

Profile
Executive Senior Director
村田 すなお

北海道大学卒業後、デジタルテクノロジーを軸にして国内大手精密機器メーカー2社に勤務。新規拠点立ち上げのためのカナダ赴任や事業加速のためのM&A推進などの経験を経て、2014年以降は執行役員として経営全般に関わる。キャリア後半ではCIOとしてグローバルなIT推進全般を遂行、業務システム、ITインフラ、サイバーセキュリティ、AI、DXなどの戦略立案、企画、設計、運用などを指揮。
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